特攻服作りについて その1

こんにちは、代表の岡本です。今日は刺繍師として特攻服作成のお話をさせていただきたいと思います。

いきなり横道をそれてしまいますが、最近にわかに刺繍屋さんの数がグッと増えたように思います。
それはおそらくAKB48グループの特攻服の需要に絡んでの新規参入ではないかと思っております。
振り返ってこれだけ世間を巻き込んで活動するアイドルグーループや団体さんって
今までには無かったかと思われます。。
80年代前半も親衛隊と呼ばれる方々は特攻服を纏っておりましたが、代表アイドル数名位に対してのもので、
48Gほど規模の大きいものではありませんでした。これからもきっと早々には現れないでしょう。
AKB48グループのファン数はは絶対数が違うのですよね。
それで、そこへ群がる(失礼!)刺繍屋さんがここ3年くらいで増えたな~というのが実感するところです。

自由経済の自然な流れとしてそれは良いのですが、問題は、”特攻服の価値”なのですよね~。
特攻服の価値につきましては、当HPの「きてやこうて屋の思い」で既に述べさせていただいておりますが、
お客様の信念と作り手の信念のぶつかり合いで生まれるものだと信じております。
作り手側に求められるのは、ずばり、”品質と入魂”。

特攻服の刺繍は常々、仏像の彫刻と同じ様な感覚(作ったことはありませんが・・・)で行わせていただいているのですが、
”品質なくして入魂なし”と思っております。
皆様のご自宅や実家の仏像が歪を生じていたり、真っ直ぐでなかったりすればそれに手を合わせる気持ちというのは
おのずと薄れないでしょうか。
本日はその品質についてお話させていただきたいと思います。

特攻服というのは俗に言う纏いであり、オーナー様のこれからの活動を強力にサポートするアイテムとなってくれるものですね。
なんといっても度派手ですし、思いを言葉にして刻んでいますし、しかも高価です。これだけアピール性のある衣装って代わりが無いですよね。
オーダーされるお客様はこういうものを手に入れようとされているのです。
バイクで極める、アイドルを協力にサポートする、熱い声援を捧げる、卒業式を記念に飾る・・・
全て信念が宿る中でオーダーされるものですね。
お客様にとって「特攻服を纏う」ということは同時に信念をもった行動をすることになります。
信念にもいろいろな強弱ああって、一概には一括りにできないのですが、

きてやこうて屋に限っては信念の強いお客様とのみ
タッグを組ませていただきたいというおもいはあります。

それはさておき、作り手として真っ先に問われるのは品質です。
お客様の信念に品質は負けてはいないか・・・お客様の要望に品質がついていくのか・・・
繰り返しになりますが、品質なくして入魂なし。
もう一つ踏み込めば、”入魂なくして価値有る特攻服無し”。
価値ある特攻服の生み出しはお客様の信念と作り手の品質が初めの関門となります。

刺繍というのはパソコンとミシンがあれば形にはなってくれます。
そうです、購入資金と置く場所とPCの知識があれば目の前のお客様にもできることでしょう。
私達刺繍業者はここで終わっては決してダメなのですね。

プロとして、これから打ち込む生地と個々に向き合い、この生地に対しては
「どれくらいの糸密度で」「どれくらいのステッチ幅で」「どの方向に糸を飛ばすのか」「糸調子の強弱は」・・・
品質の追求は生地の攻略です。生地というのは糸の編によって構成されています。
その生地の糸の編と、これから打ち込む刺しゅうの織が綺麗にまとまらないと
シワやツリの多い、ボコボコとした特攻服になってしまいます。
しかも同じ特攻服であれば同じ設定にはならないというのがこれまたまたややこしい話です。
生地の顔料成分により、黒生地と白生地では上記の設定は全く異なってきます。
更に一つの特攻服でも、背中と袖では生地の繊維の方向が異なるため設定はここでも変わってきます。
生地をよく見ていただくと、斜めに細かな筋が入っていますよね。
これが繊維の方向で、繊維の方向に並行及び垂直に生地を引っ張ってあげると生地は伸びます。
繊維の方向に45度の角度をつければ生地はほとんど伸びません。
これを見極めながら刺繍データーは作成しなければなりません。


生地に対していかにフラットに打ち込むか・・・我々の究極の使命です。
綺麗な刺繍.JPG
残念ながらそうではない特攻服を近年、多々見受けます。残念でなりません。
これって特攻服全体の価値を下げていないだろうか・・・よく考えてしまいますね。
私たちきてやこうて屋もお客様の熱い思いに答えられるよう日々精進です。


次回は入魂についてお話させていただきたいと思います。
                                    きてやこうて屋 岡本